本当のむかで館日記（８）

　2004年のシーズンにおける我が家へのむかで初登場は、5月26日のことであった。

　夕食後、祖母の部屋に「大きなむかで（祖母談）」が出現し、自分では対応ができないと思ったのでそのとき一番祖母の部屋の近くにいた（私の）母を呼んだ。
　母はハエたたきとキンチョール、という（母にとっての）対むかで戦標準装備で臨み、殺虫剤をかけて弱らせたあとにハエたたきで会心の一撃！！
　手ごたえは十分だったのだが、勢い余ってむかでの体がどこに飛んでいってしまったのかがわからない・・・まあ、仕方ないので玄関まえの廊下まで戻ってきたらこれがなんと！
「う〜、やんだちゃ〜」
母のエプロンの胸元に、さっきハエたたきで吹っ飛ばしたむかでがくっついていたのである。
　・・・そのときの母の大声は、２階で子どもといっしょにPS２のドラクエ�Xで遊んでいた私にも当然聞こえた。
「なんかあったのかな？」「さあ？」
でも、なんとなくイヤな予感がしていたら、ほどなく母の声。
「○○（私の本名）〜！
むかで出てきたなや、
もうただいだがら、かだづげでけねが？！」
（「ああ、やっぱり・・・やれやれ・・・」）
「今行ぐ〜、待ってろ！」
と、階段を下りたら、微妙なキンチョールのにおいの中で、確かに結構大きな（体長１０cm弱程度か）むかでが一匹、玄関前の廊下に横たわっていた。
よく見てみると、頭部側のほうがみごとに潰されている。

「むかではよ、畳とか絨毯みたいなやわらかいものの上で叩いでも全然だめなんだ。下がかっだい（堅い）ところで叩がねど・・」と未だ興奮覚めやらぬ様子の母を尻目に私は、
（「すごい・・・まさかここを狙って叩いたわけじゃないだろうけど・・・」）と、
結果的に極めて的確な位置にヒットした母の一撃に感嘆しつつ、ピンセットでむかでをつかむと、くず入れへと向かったのであった。
　
（2004年5月28日記）

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