28MG0220（LP）
POCG7007
が、今となっては10年以上前に立ち読みした本（クレーメルの著書）の中の話の引用ということになってしまい大変申しわけないが、この録音の際にはクレーメルとアバドの間にかなりの確執があったというか、クレーメルがアバドに対して少なからぬ不信感を抱いていたらしい。
「冬」の第二楽章が異様に早いのが印象深い演奏なのだが、クレーメルによるとこれはアバドが「折れて」クレーメルのテンポを採用したものが収録されたらしい。しかしそれに対してアバドが「彼のテンポで演奏したのだから、レコードを発売する時には自分の名前を指揮者として出すのはやめてくれ」とゴネて大変だった・・・みたいなこともあったのだそうだ。（そのほかの詳しいところはよく覚えていないが、少なくともこの「四季」の録音の際にはとにかくクレーメルはアバドには全くいい印象は持たなかったようだった。）
が、聴いているほうにしてみれば、別にそんなことはどうでもいいのだ。
独奏者と指揮者が対立しようが犬猿の仲だろうが、要は「できあがったレコードやＣＤにどんな演奏が入っているか」である。
クレーメルによる暴露話？を知ったあとも、この演奏に対する基本的な評価は変わっていない。いや、むしろ「お互いが意地を張り合った結果がこの演奏か」と、以前よりも好印象になったくらいである。
・・・ともあれ、クレーメルとアバドの、少なくとも正規盤では唯一の共演、としても貴重な存在（というか、二作目以降が出なかったのは当然かも知れないが（苦笑）。）
・協奏曲ト短調RV577「ドレスデンのオーケストラのために」
PHCP1167
「冬」の第二楽章はクレーメル盤より35秒も長いが、これが本来？の「アバドのテンポ」なのだろうか。
RV577は・・・主役は確かにヴァイオリンと思う。でも名前は明記されていないがCOEの各首席奏者のレベルの高さをひしひしと感じさせてくれる演奏。
アバドとムローヴァの共演録音はもっとたくさんありそうで、実はこれを含めて2種類しかない。でも、どちらもいい演奏と思う。
２・協奏曲ハ長調RV.556『聖ロレンツォの祝日のために』
2072378（DVD）
アバド/スカラでバロック以前の音楽というと、バッハ/ブランデンブルク協奏曲のＣＤがあった。このヴィヴァルディの2曲はそれと同様に生真面目な演奏だが、同時にバッハよりもずっと柔軟。
映像の全体的な雰囲気や、アバドの本当に若々しい風貌、楽団員の表情等からは、相応の「古い」映像だな、という印象は否めないものの、演奏自体はモダン楽器使用にも関わらずヘンに厚かったりはぜずスリムで清々しいものであり、決して、一時代前の演奏スタイル、というネガティヴな印象を抱くようなものではない。
また、ペルゴレージのすぐあとにヴィヴァルディを聴くと後者の老練さというか「聴かせ上手」さというか、よくも悪しくも「世間慣れ」した感じが際立つように思う。
１−CF2061
S・ヴァーレット、
RAIトリノ合唱団
時期的にはアバドがメジャーレーベルへの録音を本格的に始めたころになるが、その後のアバドはこのような作品と言うかジャンルをメインのレパートリーとしたわけではないことは周知のとおり。
でも、近年のアバドの活動を見れば、改めて正規の新録音でこの曲を聴いてみたいとも思う。
・協奏曲 ト短調 ＲＶ．577
LCB002
そのため上記「４」とどっちが早い収録だったのか、も未確認。
・RV．558：基本的に真面目に粛々と？進行するが、マンドリン、ティオルバ、タンブーラン・ド・ベアルンを含む、少々特殊な編成の曲を基本的には真面目に粛々？と、しかし上記の楽器たちの上品かつ愉しく個性的な音色をしっかりと生かしながら手堅くまとめている。
・RV．577：同じ曲のCOE盤やスカラ盤と比べた場合には録音状態でも楽団の技量や音色の魅力の点でも正直ひけをとるが、真面目で誠実な進行の中で、最も根源的な部分での演奏する楽しさとそれを聴く楽しさをストレートに伝えてくれるのも事実。
また、なによりも「これは実はアバドが好きな曲のひとつである」のだろうし。