ブルックナー（1824〜96）とワーグナー（1813〜83）

「第３交響曲」の献呈を受けてもらったときの感激ぶり、ワーグナー逝去の報に受けた大きな衝撃・・・
ブルックナーがワーグナーを大変尊敬していたことや「ワーグナー信奉者」であることを決して隠そうとしていなかったことを示すエピソードはいろいろとある。

しかし、音楽家としての、また人間としての両者が「似て」いたのか、ということになるとそれは全く別の話のようである。

両者のキャラの違いを端的に示すものとして、評論家ハンスリックからの酷評に対し、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に泣きついたというブルックナーと、自作の楽劇の中にハンスリックをモデルにした登場人物を創造して嘲笑したワーグナー、というエピソードを挙げておく。

あと、ワーグナーの「ワルキューレ」を見たブルックナーがその最後のシーンについて「なんであの女（ブリュンヒルデ）は焼かれたのだ？」と尋ねたという、はっきり言って笑えないのだが笑うしかない話もある。
（この話をワーグナー本人が聞いていないことを祈るばかりだ（笑）。）

ブルックナーがワーグナーを本気で尊敬していたのは間違いないとしても、ワーグナーのほうは、表面的にはともかく本音の部分では、ブルックナーの言動を微苦笑しつつ見ているしかない、というところが多分にあったのではないか、と、両者に関するいろんな話を読んで勝手に想像している。

ブルックナーがワグネリアンであったことは、特に一時期のウィーンにおいては、彼本人やその作品に対する無理解・偏見の大きな要因にもなっていたとは多くの記録が伝えるところである。しかし、実際にはワーグナーとは芸術的にも人間的にも全く異なっていたようなブルックナーがそういった理由で非難されていたことは、今から見るとなにか理不尽なことにも思える。

（2005年2月記）

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