（2012年4月記）
オーケストラのまろやかで自然な音色を十二分に生かしているのだが、指揮者が故意につまらなく聴かせようとしているかのようななんともいえない微妙な違和感が全曲を通して存在する演奏。「個性的」ではあるが、「好演」とは私には決して言えない。
マルトン（Ｓ）、ノーマン（Ｓ）、ウィーン国立歌劇場合唱団。
ウィーンフィルの美音と、マルトン、ノーマンの美声を徹底的に浪費したノリの良くない退屈な演奏。
また「第１番」同様、わざとつまらない演奏にしようとしているとしか思えない指揮者の解釈というかセンスにはある意味感嘆。
バルツァ（Ms）、ウィーン少年合唱団、ウィーン国立歌劇場合唱団の女声部。
壮大さを出そう、という意図は感じられる。部分的には美しいところ・魅力的なところも少なくない。
声楽陣は合唱も独唱も素晴らしい。
でも全体として聴こえてくるのは焦点も起承転結もはっきりしない盛り上がりに欠ける演奏、というのが正直な感想。
バトル（Ｓ）。
ドライな解釈＋微妙にいやらしい（笑）表情付け＝案外格調の高い、また独特のチャーミングな雰囲気を持つ演奏。でも、よくも悪しくも面白みのある演奏ではない。
なお、バトルの歌唱は作為的で不自然。決して魅力的なわけではないと私は思う。
悠々と大河が流れるかのような重々しく貫禄のある演奏。第3楽章のスケールの大きさと融通無碍な感じは特に素晴らしい。暗く情熱的で上品なアダージェット、各パートの趣あふれる音色を最大限に生かしながらゆったりと堂々と歩を進める終楽章も良い。
本全集の中では随一の名演。
上記「第5番」と同時期の録音。明晰な響きで迫力あふれる音楽が違和感なく自然に流れる。表面的な効果を狙ったり安っぽい感傷に溺れたりすることは決して無い。
中でも、アンダンテ（第3楽章）のしっとりとした情感あふれる演奏はとても良い。
上記「第5番」と比べた場合には、この「第6番」はわずかに「軽い」きらいもないではないが、本全集では好演のほうであるのは間違いない。
なお、終楽章の第407〜414小節は「１オクターブ上げてはいない」演奏である。蛇足ながら。
かなり露骨であざとい（笑）解釈だがそれがウィーンフィルのマイルドな音色で中和されて不思議な魅力を持つユニークな演奏になった。粗く生々しい第1楽章と、温かい演奏の中でくっきりと陰影を浮かび上がらせたかのような第4楽章が特に強く印象に残る。
万人向けの名演だった「第5番」と好一対の、マニアックな好演である。
スウェート、コバーン（Ｓ）、クィヴァー、ファスベンダー（Ａ）、リーチ（Ｔ）、ニムスゲルン（Br）、エステス（Bs）、ウィーン国立歌劇場合唱団、アルノルト・シェーンベルク合唱団、ORF合唱団、ウィーン少年合唱団。
第１部は「全集を完成させるために仕方なく録音しました」といった雰囲気が漲る演奏。
それに比べたら第２部ははるかにましだが、全体としては不自然で違和感ばかりの進行でしかも盛り上がりに欠ける。
全曲を通して（何度も同じような表現で恐縮だが）独唱者と合唱団とオーケストラの無駄使い、と言わざるを得ない録音。
明晰かつ独特の色気のある演奏。深遠さにはやや欠けるものの、同曲の他の演奏にはなかなか見出せない不健康な魅力がある。
何か濁った感じの音色でかつ重苦しさもある演奏。でもそれをこの曲の「後期ロマン派」的な解釈と見た場合には、それなりのクオリティの高い演奏とも思う。
バルツァ（Ms）。
独唱もオーケストラも音自体は美しいのだが、曲全体を通したまとまりと説得力に乏しい。遅めのテンポが強い倦怠感を覚えさせる演奏。