芦沢～舟形間旧線

７－２　芦沢～舟形間（山形県尾花沢市・舟形町）
　
奥羽本線大石田～舟形（ふながた）間の開業は1902(明治35）年7月21日のことですが、この区間では猿羽根（さばね）峠を越える必要があり、冬季間には資材を載せた橇を人力で麓から引くなどの難工事を経て、芦沢（あしさわ）～舟形間約７ｋｍの区間に５つのトンネルが設けられています。
　1975（昭和50）年9月17日、複線化・電化を控えて旧区間は廃棄され、やや西寄りに設置された４つのトンネルを伴う2.6kmの新線に切り替えられました。

　当区間の５つの旧トンネルについては、「山形の廃道」の作者様が1990年代中盤頃に踏査した際の写真をＷｅｂ上で紹介しています。合わせてご覧になっていただきたいと思います。当コンテンツの取材にあたってもそれらの写真を参照させていただ
きました。「山形の廃道」とその作者様に、この場を借りて感謝の意を表します。
　（その後、同サイトでは作者様が2003年春に踏査した際の写真を順次掲載される予定、とうかがっております。2003/７記）
　また旧トンネルの名称・長さについては『奥羽鐡道建設概要』（鉄道作業局建設部・１９０５）を参考（原典では呎単位だったものをメートル単位に換算したもの）にさせていただきました。ご教示をいただきました三浦様に深く感謝申し上げます。

Ａ・
芦沢駅から北に約2キロ、尾花沢市大海平地区の北端で舟形側に向かって線路がカーブする付近から、現在線と旧線跡が分離します。
ちなみにこの芦沢～舟形間は２００２年現在、山形～新庄間では唯一の複線区間であると同時に、４基連続で複線断面トンネルが存在する、奥羽本線としては珍しい区間です。
（芦沢側から撮影、２００１年１１月１７日）

Ｂ・
”分岐点”付近から見た新・旧の「金堀トンネル」芦沢方坑口・・・当区間旧線は曲線が多いのですが現在線は「金堀トンネル（長さ８２ｍ）」の芦沢方から、次の「滝の沢トンネル（長さ６６９ｍ）」、さらにその次の「猿羽根第一トンネル（長さ８０ｍ）」の舟形方まで見えてしまう、という事実が如実に示しているように、ほぼ直線に走っています。
（芦沢方から、２００２年５月１２日）

Ｃ・
　旧・金堀トンネル（長さ５９．５ｍ）の舟形方坑口・・・芦沢側から見て最初の旧トンネルです。
当トンネルの舟形方坑口は特に残存状況が良く、当区間遺構の白眉と言えるほどの存在感があります。
　また、笠石部には歯飾り状の装飾的な意匠が見られます。
（舟形方から、２００２年５月１２日）

	Ｄ・旧・瀧ノ澤トンネル（長さ３３７．８ｍ）の芦沢方坑口。旧・金堀トンネルから約４００メートル舟形側の地点にあります。建設工事の際に特に土砂崩落や湧水に苦しめられたトンネルだったそうです。なお、現在線も旧線も、当区間で最長のトンネル名は同じ「瀧ノ澤（滝の沢）」です。（芦沢方から、２００１年１１月１７日）
	Ｅ・旧・瀧ノ澤トンネルの舟形側坑口。本来の坑口から数十メートルにわたって、ご覧のようなかまぼこ状のコンクリートカバー（雪崩よけか？）が付いています。このカバーがいつ頃設置されたものかは今のところ不明です。（舟形方から、２００１年１１月１７日）その後２００２年５月１２日に再訪した際に、この地点で山菜取り（と思います）に来ていた地元（と思います）の方とお会いしました。「・・・このトンネルは向こう（芦沢方）に抜けられますよ・・・この近くに田畑があるから、使ってる人もいるみたいです。でも、向こう側はぐじゃぐじゃだけどね・・・」
	Ｆ・本来の坑口から舟形方を見たものです。撮影時にはカメラ内蔵のストロボを使用しましたが、それほど「暗い」というほどでもないです。・・・２００１年１１月も２００２年５月も、旧・瀧ノ澤トンネルは通り抜けていません。（芦沢方から、２００１年１１月１７日）
	Ｇ・旧・瀧ノ澤トンネルを抜けて舟形方に向かう旧線の築堤跡です。（南西側から、２００１年１１月１７日）
	Ｈ・Ｇ・の築堤跡上です。築堤下両脇は田圃になってますが、向かって左手側は休耕状態のようでした。（芦沢方から、２００２年５月１２日）なお、旧・瀧ノ澤トンネルからこの築堤跡付近が、現在線と旧線との位置関係がもっとも離れている区間になります。
	I・旧・瀧ノ澤トンネルから約４００ｍ舟形側に旧・猿羽根第一トンネル（長さ１３８．６ｍ）の芦沢方坑口があります。スノーシェッド跡が生々しく残っていますが、この鉄骨は形状から見て廃レールを転用したものが含まれているようでした。（芦沢方から、２００１年１１月１７日）骸骨の騎士たちが整然と出迎えてくれたような・・・・。
	Ｊ・旧・猿羽根第一トンネルの芦沢方坑口を入ってすぐのところにあった、なぜかぽつんと残っている枕木。（芦沢方から、２００１年１１月１７日）
	Ｋ・旧・猿羽根第二トンネル（長さ５３．３ｍ）の芦沢坑口。旧・猿羽根第一トンネルから１００ｍほど舟形側にあります。（芦沢方から、２００１年１１月１７日）
	Ｌ・旧・猿羽根第二トンネルの舟形方坑口を内部から。この坑口と、画像向かって右手のコンクリート壁・鉄柵は、現在の路線を走る車両の窓からも明確に視認できます（「N」の画像参照）。（芦沢方から、２００１年１１月１７日）
	Ｍ・旧・猿羽根第二トンネルの舟形方坑口から、現在の「猿羽根第２トンネル（長さ５２０ｍ）」を出る７０１系の上り普通電車を見ました。（芦沢方から、２００２年５月１２日）

Ｎ・
Ｍ・の画像で７０１系電車が走っていた線路脇から旧線のほうを見るとこうなります・・・芦沢（山形・福島））方からの下り列車ならば３番目に通った短いトンネルのあとに進行方向右側を、舟形（新庄・秋田）方からの上り列車ならは１番目に通った少し長めのトンネルのあとに進行方向左側を見れば、この、旧・猿羽根第二トンネルの舟形方坑門と隣接するコンクリート壁、さらにはかつて線路が走っていた築堤が確認できるはずです。

なお、コンクリート壁のほうは1964（昭和39）年11月～1965年2月の工事によって設置されたものであることを現地で確認しています。
壁の上部の山を見ると、なぜこれが必要だったのかが今でもわかるようです。（舟形方から、２００２年５月１２日）

	O・旧・猿羽根第三トンネル（長さ２６３．７ｍ）の芦沢坑口。コンクリート壁から築堤跡を200ｍほど舟形方に進んだところにあります。この画像撮影時には、付近は雨水とトンネル内外からの湧水でちょっとした底なし沼のような状態になっていました。なお、このトンネルの坑門にも、金堀トンネル同様に笠石部には歯飾り状の装飾的な意匠が見られます。（芦沢方から、2001年11月17日）
	Ｐ・旧・猿羽根第三トンネル舟形側坑口付近の内壁にはりついていた、かたつむり。ちょっとびっくりしました・・・・。もっとよく探せば、旧トンネルを住処にしている動物たちがほかにもいるのかもしれません。なお、このトンネルはポータル部、内部とも当区間の５つの旧トンネルでは最も状態が悪く、舟形方坑口から数十メートルの地点では床面が覆われるほどに壁面・天井面が崩れているかなり危険な状態でした。ので、通り抜けていません。（舟形方から、2001年11月１７日）
	Ｑ・旧・猿羽根第三トンネルの舟形側坑口を抜けると、旧線の築堤跡が現在線の猿羽根第二トンネルの北に残っています。なお、旧・猿羽根第三トンネルの中に、南の尾花沢市と北の舟形町の境界線が通ります。（舟形方から、2001年11月17日）
	Ｒ・現在線が猿羽根第二トンネルを抜けてやや西側にカーブする付近で、旧線跡が”合流”しているものと推測されます。旧・猿羽根第三トンネルから”合流点”までは２００メートルくらい、”合流点”から舟形駅までは、約2キロの距離があります。（芦沢方から、2002年5月12日）
参考文献　『舟形町史』（舟形町教育委員会・１９８２）　『鉄道廃線跡を歩くⅧ』（ＪＴＢ・２００１）　「明治時代に建造された山形県内の奥羽本線旧隧道の概要と現況」（『財団法人山形県埋蔵文化財センター　研究紀要創刊号』・2003・3） 1：25000地形図「舟形」（国土地理院・１９７５）・・・旧路線が記載されていました 1:25000地形図「舟形」（国土地理院・２０００）・・・現在の路線が記載されています	当区間はそう長くはない距離の中に、５つのそれぞれ異なった特徴を持つ旧トンネルを持つほか、現在線の車窓から明確に視認できる遺構があるという点でも魅力的な旧線跡の一つです。　ただ、人里からも幹線道路からも離れてあり、時期によってはほとんど足を踏み入れることができないくらいの草木に覆われるほか、一部の遺構の残存状況は着実に悪化してしているという、歩くには危険な旧線跡でもあります。　複線の現在線を颯爽と「つばさ」が走りぬける陰で、山形～新庄間で最大の難所であっただろう旧線跡は、文字通り、埋もれつつあります。（２００１年１１月１７日第一回取材、同年１１月２０日公開開始、同年１１月２８日キャプション改訂、２００２年５月１２日第二回取材、同年５月１９日画像入れ替え、キャプション改訂、同年5月26日キャプション改訂（トンネル名称等についての誤植訂正）　同年12月21日概略図追加してフレームに分割。2003年4月17日、同年7月15日キャプション改訂。）

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	Ｄ・旧・瀧ノ澤トンネル（長さ３３７．８ｍ）の芦沢方坑口。旧・金堀トンネルから約４００メートル舟形側の地点にあります。建設工事の際に特に土砂崩落や湧水に苦しめられたトンネルだったそうです。なお、現在線も旧線も、当区間で最長のトンネル名は同じ「瀧ノ澤（滝の沢）」です。（芦沢方から、２００１年１１月１７日）
	Ｅ・旧・瀧ノ澤トンネルの舟形側坑口。本来の坑口から数十メートルにわたって、ご覧のようなかまぼこ状のコンクリートカバー（雪崩よけか？）が付いています。このカバーがいつ頃設置されたものかは今のところ不明です。（舟形方から、２００１年１１月１７日）その後２００２年５月１２日に再訪した際に、この地点で山菜取り（と思います）に来ていた地元（と思います）の方とお会いしました。「・・・このトンネルは向こう（芦沢方）に抜けられますよ・・・この近くに田畑があるから、使ってる人もいるみたいです。でも、向こう側はぐじゃぐじゃだけどね・・・」
	Ｆ・本来の坑口から舟形方を見たものです。撮影時にはカメラ内蔵のストロボを使用しましたが、それほど「暗い」というほどでもないです。・・・２００１年１１月も２００２年５月も、旧・瀧ノ澤トンネルは通り抜けていません。（芦沢方から、２００１年１１月１７日）
	Ｇ・旧・瀧ノ澤トンネルを抜けて舟形方に向かう旧線の築堤跡です。（南西側から、２００１年１１月１７日）
	Ｈ・Ｇ・の築堤跡上です。築堤下両脇は田圃になってますが、向かって左手側は休耕状態のようでした。（芦沢方から、２００２年５月１２日）なお、旧・瀧ノ澤トンネルからこの築堤跡付近が、現在線と旧線との位置関係がもっとも離れている区間になります。
	I・旧・瀧ノ澤トンネルから約４００ｍ舟形側に旧・猿羽根第一トンネル（長さ１３８．６ｍ）の芦沢方坑口があります。スノーシェッド跡が生々しく残っていますが、この鉄骨は形状から見て廃レールを転用したものが含まれているようでした。（芦沢方から、２００１年１１月１７日）骸骨の騎士たちが整然と出迎えてくれたような・・・・。
	Ｊ・旧・猿羽根第一トンネルの芦沢方坑口を入ってすぐのところにあった、なぜかぽつんと残っている枕木。（芦沢方から、２００１年１１月１７日）
	Ｋ・旧・猿羽根第二トンネル（長さ５３．３ｍ）の芦沢坑口。旧・猿羽根第一トンネルから１００ｍほど舟形側にあります。（芦沢方から、２００１年１１月１７日）
	Ｌ・旧・猿羽根第二トンネルの舟形方坑口を内部から。この坑口と、画像向かって右手のコンクリート壁・鉄柵は、現在の路線を走る車両の窓からも明確に視認できます（「N」の画像参照）。（芦沢方から、２００１年１１月１７日）
	Ｍ・旧・猿羽根第二トンネルの舟形方坑口から、現在の「猿羽根第２トンネル（長さ５２０ｍ）」を出る７０１系の上り普通電車を見ました。（芦沢方から、２００２年５月１２日）

	O・旧・猿羽根第三トンネル（長さ２６３．７ｍ）の芦沢坑口。コンクリート壁から築堤跡を200ｍほど舟形方に進んだところにあります。この画像撮影時には、付近は雨水とトンネル内外からの湧水でちょっとした底なし沼のような状態になっていました。なお、このトンネルの坑門にも、金堀トンネル同様に笠石部には歯飾り状の装飾的な意匠が見られます。（芦沢方から、2001年11月17日）
	Ｐ・旧・猿羽根第三トンネル舟形側坑口付近の内壁にはりついていた、かたつむり。ちょっとびっくりしました・・・・。もっとよく探せば、旧トンネルを住処にしている動物たちがほかにもいるのかもしれません。なお、このトンネルはポータル部、内部とも当区間の５つの旧トンネルでは最も状態が悪く、舟形方坑口から数十メートルの地点では床面が覆われるほどに壁面・天井面が崩れているかなり危険な状態でした。ので、通り抜けていません。（舟形方から、2001年11月１７日）
	Ｑ・旧・猿羽根第三トンネルの舟形側坑口を抜けると、旧線の築堤跡が現在線の猿羽根第二トンネルの北に残っています。なお、旧・猿羽根第三トンネルの中に、南の尾花沢市と北の舟形町の境界線が通ります。（舟形方から、2001年11月17日）
	Ｒ・現在線が猿羽根第二トンネルを抜けてやや西側にカーブする付近で、旧線跡が”合流”しているものと推測されます。旧・猿羽根第三トンネルから”合流点”までは２００メートルくらい、”合流点”から舟形駅までは、約2キロの距離があります。（芦沢方から、2002年5月12日）
参考文献　『舟形町史』（舟形町教育委員会・１９８２）　『鉄道廃線跡を歩くⅧ』（ＪＴＢ・２００１）　「明治時代に建造された山形県内の奥羽本線旧隧道の概要と現況」（『財団法人山形県埋蔵文化財センター　研究紀要創刊号』・2003・3） 1：25000地形図「舟形」（国土地理院・１９７５）・・・旧路線が記載されていました 1:25000地形図「舟形」（国土地理院・２０００）・・・現在の路線が記載されています	当区間はそう長くはない距離の中に、５つのそれぞれ異なった特徴を持つ旧トンネルを持つほか、現在線の車窓から明確に視認できる遺構があるという点でも魅力的な旧線跡の一つです。　ただ、人里からも幹線道路からも離れてあり、時期によってはほとんど足を踏み入れることができないくらいの草木に覆われるほか、一部の遺構の残存状況は着実に悪化してしているという、歩くには危険な旧線跡でもあります。　複線の現在線を颯爽と「つばさ」が走りぬける陰で、山形～新庄間で最大の難所であっただろう旧線跡は、文字通り、埋もれつつあります。（２００１年１１月１７日第一回取材、同年１１月２０日公開開始、同年１１月２８日キャプション改訂、２００２年５月１２日第二回取材、同年５月１９日画像入れ替え、キャプション改訂、同年5月26日キャプション改訂（トンネル名称等についての誤植訂正）　同年12月21日概略図追加してフレームに分割。2003年4月17日、同年7月15日キャプション改訂。）